【薬学部受験】国公立薬学部を舐めたらやばい。倍率・志願者数から分かる「とりあえず国公立」が危険な理由

「大学に行くなら、やっぱり国公立でしょ」

「私立は学費が高いから、とりあえず国公立薬学部を目指します」

「国公立がダメだったら私立薬学部を受ければいいですよね?」

薬学部志望の高校生や保護者の方と話していると、こういった相談をいただくことがあります。

もちろん、国公立薬学部を目指すこと自体はまったく悪くありません。

学費を抑えられることは大きなメリットですし、研究環境に魅力のある大学も多くあります。

ただ、一つだけ伝えておきたいことがあります。

国公立薬学部、思っている以上に厳しいです。

「大学なら国公立のほうがいいよね」

くらいの感覚で、高校3年生になってから何となく目指し始めると、かなり危険です。

こんにちは。薬学部受験専門塾PharmAssist代表の寺沼香太朗です。

今回は、

国公立薬学部を舐めたら本当にまずい

という話をします。

感覚だけで、

「難しいですよ」

と言うつもりはありません。

国公立薬学部が全国にどれくらいしかないのか。

募集されている人数はどれくらいなのか。

実際に何人が志願して、何人が合格しているのか。

共通テストでは何科目必要なのか。

二次試験では何を求められるのか。

こうした数字を見ながら、なぜ国公立薬学部受験が厳しいのかを解説していきます。

特に、

「私立より国公立のほうがなんとなく良さそう」

「まだ高2だから受験勉強は高3からでいい」

「学校の定期テストではそこそこ取れているから大丈夫」

と思っている人には、ぜひ最後まで読んでもらいたいです。

目次

そもそも国公立薬学部は全国にほとんどない

まず、一番最初に知ってほしいことです。

国公立の薬学部は、そもそも大学数がかなり少ないです。

文部科学省が公表している薬学部の一覧では、国立大学が14大学、公立大学が5大学あります。

合わせても19大学です。

全国です。

北海道から九州まで全部合わせて、この数です。

一方で、私立の薬学部を設置している大学は国公立よりかなり多くあります。

つまり、

「国公立薬学部へ行きたい」

と思った瞬間に、選択肢はかなり限られます。

住んでいる地域によっては、

「自宅から通える国公立薬学部がそもそもない」

ということも普通にあります。

たとえば東京には私立薬学部が複数ありますが、国公立薬学部という条件をつけるだけで候補は一気に少なくなります。

地方でも同じです。

県内に薬学部自体がない地域もあります。

だから国公立薬学部を目指す場合、

自宅から通えるか

だけでなく、

一人暮らしをするのか。

どこまで地域を広げて受験するのか。

前期・中期・後期をどう組み合わせるのか。

私立薬学部をどこまで併願するのか。

まで考える必要があります。

6年制薬学科の定員は国公立全体でも約1100人

さらに衝撃的なのが、定員です。

薬剤師国家試験の受験資格取得を目指す6年制課程について、文部科学省の2025年度資料を見ると、

国立大学の定員は合計621人。

公立大学の定員は合計485人。

合わせて1106人です。

全国の国公立大学を全部合わせても、6年制の定員は約1100人しかありません。

ここ、かなり重要です。

「国公立薬学部」という言葉だけ聞くと、全国にたくさん募集枠があるように感じるかもしれません。

実際には違います。

しかも、この1106人すべてが一般選抜の枠ではありません。

学校推薦型選抜。

総合型選抜。

地域枠。

その他の選抜。

などに定員が振り分けられます。

つまり、一般選抜で争う枠はさらに少なくなります。

国公立薬学部が難しい最大の理由の一つは、

受験生に対して席が少ない

ということです。

過去の全国データを見ると厳しさが分かる

全国の国公立薬学部を完全に同じ条件で比較するのは、実は簡単ではありません。

大学によって、

6年制と4年制をまとめて募集する。

学科別に募集する。

総合入試から薬学部へ進む。

前期・後期・中期で募集する。

といった違いがあるからです。

特に東京大学では、一般的な大学のように「薬学部薬学科へ出願」という仕組みではありません。

北海道大学にも総合入試があります。

そのため、

「2026年度の全国国公立薬学部の倍率は正確に○倍です」

と単純に一つの数字へまとめるのは注意が必要です。

ただ、国公立薬学部の競争の大きさを見るうえで参考になるデータがあります。

文部科学省が公表した2019年度の薬学部入学定員関係データを、国立・公立の薬学系募集について単純に合計すると、志願者は延べ1万1000人を超えていました。

実際に受験した人数も8600人を超え、合格者は約2500人です。

受験者数を合格者数で割ると、実質競争倍率は約3.4倍。

志願者数と合格者数の関係で見れば約4.5倍です。

もちろん先ほど説明したとおり、一括募集なども含まれるため、

「薬剤師を目指す6年制薬学科だけの全国倍率」

としてそのまま使う数字ではありません。

また、2019年度のデータなので、現在の入試そのものでもありません。

それでも、

国公立薬学系に非常に多くの受験生が集まり、合格できる人数は限られている

という構造はよく分かると思います。

2026年度も高倍率の国公立薬学部は普通にある

では、最近の入試はどうでしょうか。

2026年度一般選抜を見てみます。

千葉大学薬学部の前期日程では、

志願者412人。

受験者381人。

合格者74人。

実質倍率は約5.1倍でした。

実際に試験会場へ来た受験生だけで考えても、約5人に1人しか合格していません。

静岡県立大学薬学部では、複数の日程・学科を合わせた薬学部の競争もかなり厳しく、実質倍率が5倍を超える区分があります。

名古屋市立大学薬学部でも、2026年度一般選抜の学部全体では、受験者683人に対して合格者143人。

実質倍率は約4.8倍です。

「公立なら国立より簡単そう」

と思っていた人。

全然そんなことはありません。

むしろ公立大学の中期日程には、高い倍率が出る大学があります。

中期日程の志願倍率は10倍を超えることもある

国公立薬学部受験で特に特徴的なのが、公立大学の中期日程です。

たとえば2026年度。

山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部の中期日程では、募集45人に対して志願者707人でした。

志願倍率は約15.7倍です。

15倍です。

もちろん、中期日程は出願した人全員が実際に試験を受けるわけではありません。

前期日程で合格したことで中期を受験しない人もいます。

実際、この年度の受験者は392人、合格者106人で、実質倍率は約3.7倍でした。

だから、

15.7倍=15人に1人しか絶対に受からない

という意味ではありません。

ここは倍率を見るときの注意点です。

しかし、

45人の募集枠に対して700人以上が出願する

という規模感自体は知っておいてほしいと思います。

国公立薬学部は、

「とりあえず出してみようかな」

という人だけが受ける世界ではありません。

共通テストを突破し、国公立薬学部を現実的に考えている受験生が全国から集まってきます。

岐阜薬科大学も「倍率2.5倍だから簡単」ではない

2026年度の岐阜薬科大学中期日程では、

志願者529人。

受験者295人。

合格者117人。

実質倍率は約2.5倍でした。

「さっきの5倍と比べたら低いじゃん」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、倍率2.5倍という数字だけを見て、

「結構受かりそう」

と考えるのは危険です。

そもそも岐阜薬科大学へ出願している時点で、

共通テストを受けている。

数学Ⅲまで勉強している。

化学の記述試験へ対応している。

国公立薬学部を狙える学力層にいる。

という受験生が多く含まれています。

倍率は、

全国の高校3年生全員の中で何人に1人受かるか

を表している数字ではありません。

ある程度学力のある受験生が集まったあと、その中でさらに何人に1人が合格するか

を表しています。

この違いはかなり重要です。

大阪大学の倍率が低い年度でも「穴場」ではない

倍率の危険な見方をもう一つ紹介します。

難関大学でも、年度によって実質倍率が2倍を下回ることがあります。

すると、

「倍率低いじゃん。狙い目じゃない?」

と思う人がいます。

でも違います。

たとえば大阪大学薬学部のような難関大学の場合、そもそも出願する受験生の学力が非常に高いです。

共通テストで高得点を取り、難しい二次試験へ対応できる受験生同士が戦います。

倍率1.8倍の難関大学と、

倍率3倍の比較的入りやすい大学を比べて、

「1.8倍だから前者のほうが簡単」

とはなりません。

極端な例を出せば、

東大受験生100人の中から50人合格する試験

と、

高校生全体から100人集めて40人合格する試験

では、単純な倍率だけで難易度を比較できません。

倍率は大切なデータですが、

偏差値。

共通テストボーダー。

合格最低点。

試験科目。

受験者層。

まで一緒に見る必要があります。

「大学なら国公立でしょ」が危険な理由

ここからが今回一番伝えたいところです。

僕は、

国公立大学を目指すことが悪い

と言いたいわけではありません。

むしろ、学費や研究環境を考えて、明確な理由を持って国公立を目指すのであれば、ぜひ挑戦してほしいです。

危険なのは、

「大学って普通、国公立を目指すものじゃないの?」

という何となくの価値観だけで選ぶことです。

特に薬学部では、

国公立薬学部と私立薬学部で、必要な受験勉強がかなり違います。

私立薬学部は3科目で受験できる大学が多い

私立薬学部の一般選抜では、

英語。

数学。

化学。

など3科目を中心に受験できる大学が多くあります。

大学によっては数学と化学。

英語と化学。

など、さらに科目を絞れる入試方式もあります。

もちろん難関私立薬学部は簡単ではありません。

慶應義塾大学。

東京理科大学。

北里大学。

星薬科大学。

明治薬科大学。

東京薬科大学。

京都薬科大学。

大阪医科薬科大学。

など、しっかりした学力が必要な大学はたくさんあります。

しかし、必要な科目数という意味では、国公立大学より絞りやすいケースがあります。

国公立薬学部は共通テストで多科目が必要

一方、国公立薬学部では、大学入学共通テストで幅広い科目を使う大学が多いです。

英語。

数学。

国語。

理科。

地歴公民。

情報。

などです。

理科についても、大学によっては2科目必要になります。

つまり、

薬学部だから英語・数学・化学だけやればいい

とはいきません。

国語も必要。

情報も必要。

地歴公民も必要。

数学も複数範囲。

理科も複数科目。

さらに二次試験対策も必要。

という状態になります。

この科目数の差を、高校3年生になってから知るとかなり厳しいです。

共通テスト対策だけでも大変

たとえば私立薬学部専願の受験生なら、

英語。

数学。

化学。

の3科目へ学習時間をかなり集中させることができます。

1日6時間勉強できるなら、単純化すれば3科目へ約2時間ずつ使えます。

しかし国公立大学を受験する場合、

英語。

数学。

化学。

物理または生物。

国語。

地歴公民。

情報。

などを並行して勉強する必要があります。

当然、1科目あたりに使える時間は減ります。

しかも、

「共通テストだから簡単」

ではありません。

共通テストには共通テスト特有の難しさがあります。

大量の情報を短時間で処理する。

長い問題文から必要な条件を見つける。

複数の資料を読み比べる。

時間配分を考える。

知識をそのまま聞かれるだけではない。

こうした力が必要になります。

学校の定期テストで80点、90点を取れていても、共通テスト形式になると思うように点数が取れない高校生は珍しくありません。

さらに二次試験が待っている

そして、共通テストが終われば終わりではありません。

国公立薬学部では、個別学力検査、いわゆる二次試験があります。

大学によって科目は違いますが、

数学。

化学。

英語。

物理。

などが課されます。

数学Ⅲまで必要な大学もあります。

たとえば岐阜薬科大学では、一般選抜で数学と化学が課され、数学Ⅲまで出題範囲に含まれます。

共通テストで幅広い科目を勉強しながら、

数学Ⅲまで完成させる。

記述式数学を解けるようにする。

化学の記述問題へ対応する。

という勉強が必要です。

ここが本当に大変なんです。

共通テストだけに全振りしてもダメ

国公立志望の高校生にありがちな失敗が、

秋以降、共通テスト対策しかやらなくなる

ことです。

もちろん共通テストは大切です。

点数が低すぎれば、出願校そのものを変更しなければならないこともあります。

だから共通テスト対策は必要です。

でも、1月までずっと共通テスト問題しか解かず、

数学Ⅲ。

化学の記述。

二次試験レベルの英語。

を何か月も触っていない。

その状態で共通テストが終わり、

「よし、ここから二次対策を始めよう」

となっても、間に合わないことがあります。

理想は、共通テスト前の段階で二次試験に必要な基礎・標準問題をある程度完成させておくことです。

共通テスト後は、

ゼロから二次試験の勉強を始める期間

ではなく、

過去問演習と弱点補強をする期間

にしたいです。

逆に二次試験だけできてもダメ

反対もあります。

数学が得意。

化学が得意。

記述式の問題も解ける。

でも、

国語が取れない。

リスニングが取れない。

情報を勉強していない。

地歴公民を後回しにしている。

という状態です。

これも危険です。

国公立大学では、共通テストの配点がかなり大きい大学があります。

二次試験が得意でも、共通テストで大きく失点すると、かなり不利な状態から戦わなければなりません。

国公立薬学部受験は、

得意な3科目だけ伸ばせばいい

という戦いではありません。

苦手科目を放置できない

という点が非常に難しいんです。

国公立薬学部の共通テストボーダーも高い

国公立薬学部では、共通テストのボーダー得点率も高い大学が多くあります。

大学や学科、方式によって異なりますが、国公立薬学部では共通テストで7割台が必要になる大学が多く、難関大学では8割前後、さらに上の水準が求められるケースもあります。

ここで、

「7割ならそんなに高くなくない?」

と思った人は注意してください。

1科目だけ70点取る話ではありません。

複数教科を合わせて7割、8割です。

英語80点。

数学80点。

化学80点。

だけではなく、

国語。

情報。

地歴公民。

もう一つの理科。

なども含めて、全体を高い水準で揃える必要があります。

一つの科目で大崩れすると、全体の得点率が一気に下がります。

国公立薬学部には「簡単なところへ下げる」がしにくい

私立薬学部の場合、偏差値帯の選択肢が比較的広くあります。

現在の成績に合わせて、

難関校。

実力相応校。

安全校。

と段階をつけて受験校を組みやすいです。

しかし国公立薬学部は大学数自体が少ない。

しかも、最も入りやすいと言われる大学であっても、

共通テスト。

多科目。

二次試験。

という基本構造は変わりません。

「第一志望が厳しいから、偏差値を10下げた国公立薬学部にすれば余裕」

という単純な話ではありません。

大学によって共通テスト配点や二次試験科目も違います。

下げた先で、

数学Ⅲが必要。

物理が必要。

英語の配点が大きい。

中期日程で倍率が高い。

ということもあります。

国公立薬学部は、

どこでもいいから国公立

という選び方と相性がよくありません。

「学費が安いから国公立」は十分な理由。でも準備は必要

ここまでかなり厳しい話をしましたが、

「学費を抑えたいから国公立薬学部へ行きたい」

という理由は、僕は十分理解できます。

薬学部は6年間です。

国立大学の標準的な授業料と入学料を基準にすると、6年間で約350万円。

一方、私立薬学部では6年間で1000万円を超える大学が多くあります。

家庭によっては、

この差なら国公立を目指したい

となるのは当然です。

ただし、

学費が安いから国公立

と考えることと、

国公立に受かるための勉強をしていること

は別です。

ここを混同しないでください。

高3の秋になって、

「私立は1000万円以上かかるので、やっぱり国公立にしたいです」

と言われても、そこから新しく国語・情報・地歴公民・理科2科目・数学Ⅲを仕上げるのは現実的にかなり厳しい場合があります。

国公立を選ぶなら、早く決める。

これが本当に重要です。

国公立薬学部を目指すなら高校2年生までに方向性を決めたい

理想を言えば、高校1年生から国公立を意識してほしいです。

遅くとも高校2年生の間には、

国公立薬学部を本気で目指すのか

を考えておきたいです。

なぜなら、必要な科目数が多いからです。

高校3年生になってから、

英語が苦手。

数学ⅠAも怪しい。

数学ⅡBCも完成していない。

数学Ⅲはこれから。

化学もまだ理論化学の途中。

物理も必要。

国語も共通テストで使う。

という状態になると、全部を同時に仕上げなければいけません。

時間が足りません。

高校1・2年生のうちに、

英単語。

英文法。

数学ⅠA。

数学ⅡBC。

化学基礎。

化学。

などをしっかり進めておけば、高3で入試レベルの演習へ移れます。

国公立薬学部に合格する高校生は、

高3になった瞬間に急に頭がよくなった

わけではありません。

その前から積み上げているケースが多いです。

学校の定期テストだけで判断しない

もう一つ注意してほしいことがあります。

「学校のテストでは結構上位なので、国公立薬学部いけますか?」

という相談です。

定期テストでしっかり点数を取ることは素晴らしいです。

でも、

定期テストの順位

と

国公立薬学部への合格可能性

は同じではありません。

学校によって定期テストの難易度が違います。

範囲も決まっています。

授業で扱った問題と似た問題が出ることもあります。

一方、大学入試では、

高校3年間の広い範囲。

初めて見る問題。

時間制限。

全国の受験生との競争。

があります。

だから国公立薬学部を考えるなら、模試を利用してください。

共通テスト模試。

記述模試。

などから、

全国でどの位置にいるのか。

どの科目が弱いのか。

志望大学までどれくらい距離があるのか。

を確認しましょう。

E判定だから諦める必要はない

ここまで読むと、

「じゃあ今E判定だから無理じゃん」

と思う人もいるかもしれません。

それも違います。

高校1年生。

高校2年生。

高校3年生の春。

この段階のE判定だけで志望校を諦める必要はありません。

模試の判定は、

現時点の学力で入試を受けたらどうなるか

を見るための一つの目安です。

未来の結果ではありません。

大切なのは、

なぜE判定なのか

です。

英語が足りないのか。

数学が足りないのか。

化学が足りないのか。

共通テスト型の問題に慣れていないのか。

数学Ⅲが未習だからなのか。

原因によって、やることは変わります。

国公立薬学部が難しいからこそ、

「もっと頑張る」

だけではなく、

何を、いつまでに、どのレベルまで完成させるか

を決める必要があります。

国公立を目指す人ほど「戦略」が必要

国公立薬学部受験では、勉強時間を増やすだけでは不十分です。

科目が多いからこそ、優先順位が重要です。

たとえば高2で、

英語偏差値60。

数学偏差値45。

化学偏差値50。

だった場合。

英語をさらに65へ伸ばすことだけに時間を使うより、数学をまず50、55へ上げるほうが全体として合格に近づく場合があります。

逆に、

数学65。

化学65。

英語45。

なら、英語を放置したまま数学の難問ばかり解いていても、共通テストや二次試験で英語が足を引っ張ります。

国公立受験では、

一番好きな科目を勉強する

ではなく、

合格点から逆算して、最も優先すべき科目を勉強する

という考え方が重要です。

数学は基礎を早く完成させる

国公立薬学部の数学対策では、まず基礎・標準問題を確実に解けるようにしましょう。

数学が苦手な人は、

『やさしい高校数学』

『入門問題精講』

『基礎問題精講』

と進める方法があります。

学校で『青チャート』や『Focus Gold』を使っている場合は、その教材で基本問題を固めても構いません。

その後、『標準問題精講』へ進みます。

国公立大学を目指し、さらに高い記述力が必要であれば、『1対1対応の演習』まで進めることも選択肢になります。

ただし、

難しい参考書を使っている=国公立対策ができている

ではありません。

基礎問題で計算ミス。

典型問題で解法が出てこない。

数列が苦手。

ベクトルが苦手。

数学Ⅲの微積が完成していない。

この状態で難問集をやっても、効率はよくありません。

まず標準問題を安定して取ることです。

化学は薬学部受験の中心科目

化学も非常に重要です。

国公立薬学部では、共通テストでも二次試験でも化学を使う大学が多くあります。

まず、

理論化学。

無機化学。

有機化学。

を一通り完成させてください。

化学が苦手な人は、『宇宙一わかりやすい高校化学』で理解しながら、『リードLightノート』で問題演習を行う方法があります。

理解ができたら、学校で使っている『セミナー』などの問題集へ進みます。

さらに『化学重要問題集』などを使って、標準的な入試問題を解けるようにしていきます。

国公立薬学部の場合、

答えだけ出せればいい

ではなく、考え方や計算過程を求められる試験もあります。

理論化学の計算。

有機化学の構造決定。

化学平衡。

電池・電気分解。

などは、途中過程まで理解しておく必要があります。

英語も後回しにできない

薬学部志望者には、

「数学と化学が大事だから、英語は後で」

という人がいます。

国公立では危険です。

英語は短期間で急激に伸ばしづらい科目です。

単語。

文法。

英文解釈。

長文。

を順番に積み重ねる必要があります。

まず学校で使っている『ターゲット1900』などの単語帳を仕上げます。

そのうえで国公立薬学部を目指すのであれば、『医歯薬系の英単語』まで追加してもよいでしょう。

文法は『レベル別英文法』や学校で使っている『Vintage』『Next Stage』。

英文解釈は『入門英文解釈の技術70』『基礎英文解釈の技術100』、または『英文解釈ポラリス1・2』。

長文は『英語長文ポラリス0』『The Rules 1』『ポラリス1』『The Rules 2・3』『ポラリス2』と段階的に進めます。

国公立大学でさらに高いレベルが必要な場合は、『The Rules 4』『ポラリス3』や『やっておきたい英語長文』シリーズまで使って演習量を増やしていきます。

高3から国公立へ変更するなら現状分析が必要

高校3年生になってから、

「やっぱり国公立薬学部へ行きたい」

と思うこともあるでしょう。

その場合、絶対に無理とは言いません。

ただし、感情だけで変更しないでください。

まず、

現在の共通テスト模試の得点。

英語の偏差値。

数学の偏差値。

化学の偏差値。

もう一つの理科の状況。

数学Ⅲの進度。

国語の得点。

情報の得点。

地歴公民の得点。

を全部確認してください。

そのうえで、

入試まで残り何か月あるのか。

1週間に何時間勉強できるのか。

第一志望のボーダーまで何点足りないのか。

二次試験で必要な科目は何か。

を計算します。

ここまでやって、

現実的に間に合う計画を作れるなら挑戦する。

どう考えても全科目を完成させる時間がないなら、私立薬学部も含めて進路を再検討する。

これが進路戦略です。

「国公立のほうがかっこいいから」

だけで人生の選択肢を狭める必要はありません。

私立薬学部を選ぶことは逃げではない

これも伝えておきたいです。

国公立薬学部に行くことが上。

私立薬学部に行くことが下。

ではありません。

最終的に薬剤師を目指すのであれば、6年制薬学科を卒業し、薬剤師国家試験へ合格する必要があります。

大学選びでは、

学費。

研究内容。

国家試験実績。

進級状況。

立地。

実習環境。

就職。

入試科目。

本人との相性。

を総合的に考えるべきです。

家庭の事情から国公立を第一志望にする。

非常に合理的です。

研究したい分野があるから国立大学へ行く。

これも素晴らしいです。

自宅から通える私立大学で学費と生活費を抑える。

それも一つの戦略です。

大切なのは、

「国公立だから正解」

ではなく、

自分がなぜその大学へ行きたいのか

を考えることです。

保護者の方にも知ってほしいこと

この記事を保護者の方が読んでいるのであれば、ぜひ知っておいてほしいことがあります。

「国公立に行ってくれたら学費が安い」

と思うのは当然です。

薬学部では6年間の学費差が非常に大きいので、家計への影響も大きくなります。

ただ、

「国公立に行ってほしい」

と伝えるだけでは、受験生は何をすればいいのか分かりません。

国公立薬学部を目指すなら、

いつから受験勉強を始めるのか。

どれくらいの科目数が必要なのか。

共通テストで何点必要なのか。

二次試験に数学Ⅲがあるのか。

どの私立大学を併願するのか。

一人暮らしになった場合の生活費はいくらか。

ここまで含めて考える必要があります。

場合によっては、

自宅から通える私立薬学部

と

県外の国公立薬学部

で、6年間の総費用を比較すると、思ったほど差がないケースもあります。

学費だけではなく、家賃や生活費まで含めて考えてください。

国公立薬学部を本気で目指すなら今すぐやること

最後に、国公立薬学部を目指している高校生が、今日からやってほしいことをまとめます。

まず、志望大学の入試科目を調べてください。

次に、共通テストの必要科目を全部書き出します。

その次に、二次試験科目を確認します。

数学Ⅲが必要か。

理科は何科目か。

英語があるか。

配点はどうなっているか。

ここまで確認してください。

そして、自分の模試結果を横に置きます。

志望校のボーダーと自分の得点の差を、科目ごとに確認します。

最後に、

何を。

いつまでに。

どの教材で。

どこまで完成させるか。

を決めてください。

「国公立薬学部に行きたい」

だけでは、合格には近づきません。

「12月までに共通テストで○点」

「夏までに数学Ⅲの基礎問題を完成」

「9月までに化学重要問題集の標準問題を一周」

のように、行動まで具体化して初めて受験計画になります。

まとめ|国公立薬学部は「とりあえず」で目指す場所ではない

今回は、

国公立薬学部を舐めたらやばい

というテーマで解説しました。

国公立薬学部は、全国でも大学数が非常に限られています。

文部科学省の2025年度資料では、国立14大学、公立5大学。

合わせて19大学です。

薬剤師を目指す6年制課程の入学定員は、国立と公立を合わせても約1100人です。

そして実際の入試では、

数百人の志願者。

3倍、4倍、5倍を超える実質倍率。

10倍を超える志願倍率。

が出る大学・日程もあります。

さらに、国公立薬学部の難しさは倍率だけではありません。

共通テストで幅広い科目を勉強する必要があります。

数学。

英語。

化学。

だけでは終わりません。

国語。

地歴公民。

情報。

もう一つの理科。

まで必要になる大学があります。

そして共通テストが終わった後には、

数学Ⅲ。

化学。

英語。

物理。

などの二次試験が待っています。

だから、

「大学なら国公立でしょ」

「国公立が無理なら私立にすればいい」

くらいの感覚で高校3年生から目指すと、かなり厳しくなります。

国公立薬学部を目指すこと自体は、僕は大賛成です。

ただし、

本当に行きたいなら、早く準備してください。

高校1年生なら、今から英語と数学を積み上げる。

高校2年生なら、受験科目を確認して基礎を完成させる。

高校3年生なら、現在地と合格点との差を数字で確認する。

そして、

「頑張る」

ではなく、

何をいつまでに終わらせるのか

を決める。

国公立薬学部は、何となく受験して受かる大学ではありません。

でも、早い段階から必要な科目を理解して、正しい順番で積み上げれば、挑戦する価値は十分にあります。

「国公立だから目指す」

ではなく、

「この大学へ行きたい。そのために必要な勉強をする」

という状態を作ってください。

それが、国公立薬学部合格へのスタートです。

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この記事を書いた人

寺沼 香太朗のアバター 寺沼 香太朗 薬学部受験専門塾PharmAssist代表

薬学部受験専門塾 PharmAssist (ファーマシスト)代表の寺沼香太朗です。
薬学部受験の主要科目である、英語・数学ⅠAⅡB III C・化学・生物・面接・小論文の指導を行っております。
薬学部に特待合格した指導力の高さと、薬学部に特化した受験ノウハウ、教育コーチングを活かした学習マネジメントが指導の武器となっており、薬学部を目指す全ての高校生をアシストすることを信念に授業を行っております。

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